刊行書籍

ジェンダーからソーシャルワークを問う

[編著]横山登志子・須藤八千代・大嶋栄子[著]鶴野隆浩・中澤香織・新田雅子・宮﨑理

ソーシャルワークを切り拓く言葉がここにある

困難な状況に置かれた人々を生み出す社会の矛盾に目を向け、当事者主体の支援を展開しながら、人々を抑圧する構造の変革をもめざすソーシャルワーク。だが、その本質を失いかけているといわれて久しい。ソーシャルワークはなぜ視野を狭め、非政治化したのか。フェミニズムとジェンダーを通して、ソーシャルワークを批判的に検証し、その変革への糸口を示す意欲的論考集。

*『ソーシャルワーク学会誌』41号に書評が掲載されています。評者は三島亜紀子さんです。

 

 

 

1 語られていない構造とは何か――ソーシャルワークと「ジェンダー・センシティブ」(横山登志子) 

はじめに
1 ソーシャルワークと「ジェンダー・センシティブ」
2 事例で考える
おわりに

2 女性福祉からフェミニストソーシャルワークへ ――バトラー以後に向けて(須藤八千代)

はじめに
1 社会福祉学に登場する女性
2 ジェンダーとセクシュアリティ
3 ソーシャルワークのポストモダン的転回
4 バトラーが見落としている「障害」という問題
まとめにかえて

3 家族福祉論を通して、ジェンダーを社会福祉学に位置づける(鶴野隆浩)

はじめに
1 社会福祉学と家族福祉論
2 独特なジェンダー概念の社会福祉学への導入
3 女性福祉への収斂化
4 ジェンダー概念からの組み立て直し:現状認識から
5 ジェンダー概念からの組み立て直し:社会福祉学の問い直し
6 ジェンダー概念からの社会福祉学の再構築
結 論

4 性被害体験を生きる――変容と停滞のエスノグラフィー(大嶋栄子)

はじめに
1 2017年12月:ホームレス(Homeless)/ハウスレス(Houseless)
2 2010年2月:記憶の欠落/解離
3 2003年8月:再生のための自閉/グループホームでの日々
4 1999年5月:生き延びるためのアディクション/性被害という開示
5 心的外傷を抱える人へのソーシャルワーク
6 加害者の生/援助者のポジショナリティ/おわりに

5 ‟LGBT”とソーシャルワークをめぐるポリティクス(宮﨑 理)

はじめに:個人的なことは政治的なこと
1 死と哀悼をめぐって:Yさんとの「個人的なこと」
2 ソーシャルワークにおけるジェンダーとセクシュアリティ
3 多様性と非政治化
4 哀悼可能性(grievability)の損なわれ
5 「自身の輪郭をたどる」ということ
おわりに

6 「晩年の自由」に向けてのフェミニストソーシャルワーク――老いゆく人との女性史的実践と〈継承〉 (新田雅子)

はじめに――怒りを表出することの意味
1 高齢者福祉の課題特性と社会的機能としての〈継承〉
2 歴史学における女性史、社会学におけるライフヒストリー
3 エイ子さんのライフヒストリー
4 女性史的実践の価値

7 内面化したジェンダー規範と戸惑い、葛藤――母子生活支援の最前線に立つ援助者の語りから(中澤香織)

はじめに
1 家族を支える施設
2 支援の場でみえてくるもの
3 支援における葛藤
おわりに

 

コラム わたしとジェンダー――現役ソーシャルワーカーがジェンダー学習会で学んだこと、気づいたこと

著者について

【編著者紹介】
〇横山登志子(よこやま・としこ)
同志社大学大学院博士後期課程単位取得退学。博士(社会福祉学)、精神保健福祉士。精神科ソーシャルワーカーとして勤務経験を有する。現在は札幌学院大学人文学部教授。専門はソーシャルワークの理論と実践、経験的世界の探求、家族支援や女性支援。最近は、DV被害母子の支援に関する質的研究を行っている。主著は『ソーシャルワーク感覚』(単著、弘文堂、2008年)、『社会福祉実践の理論と実際』(編著、放送大学教育振興会、2018年)など。
〇須藤八千代(すどう・やちよ)
愛知県立大学名誉教授。単著に『歩く日――私のフィールドノート』(ゆみる出版、1995年)、『ソーシャルワークの作業場――寿という街』(誠信書房、2004年)、『増補 母子寮と母子生活支援施設のあいだ』(明石書店、2010年)、共著に『フェミニズムと社会福祉政策』(ミネルヴァ書房、2012年)、『婦人保護施設と売春・貧困・DV問題』(明石書店、2013年)、『社会福祉とジェンダー 杉本貴代栄先生退職記念論集』(ミネルヴァ書房、2015年)など。訳書にレナ・ドミネリ著『フェミニストソーシャルワーク――福祉国家・グローバリゼーション・脱専門職主義』(明石書店、2015年)。
〇大嶋栄子(おおしま・えいこ)
北星学園大学大学院社会福祉学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(社会福祉学)。特定非営利活動法人リカバリー代表、日本精神・神経医療研究センター精神保健研究所客員研究員。主な著書に『その後の不自由――「嵐」のあとを生きる人たち』(上岡陽江との共著、医学書院、2010年)、『生き延びるためのアディクション――嵐の後を生きる彼女たちへのソーシャルワーク』(単著、金剛出版、2019年)。
ジェンダーからソーシャルワークを問う

ジェンダーからソーシャルワークを問う

[編著]横山登志子・須藤八千代・大嶋栄子[著]鶴野隆浩・中澤香織・新田雅子・宮﨑理

装丁:末吉亮(図工ファイブ)

2020年6月1日・刊 定価:3,000円+税 336ページ ISBN: 978-4-909753-08-3 四六判・並製

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